とりとめのない彼女の朝

朝日が昇り始める夜明けの直前には、ベッドの中で身体が少し浮くような感じがする。
瞼は、まったく開く気配がないけれど、意識がそろそろ起き始めようとするからだわね。

眠りの浅い彼女は、いつもこんな感じで目覚めるのです。

まぁまぁ、よく眠れた!
そろそろ、枕元の iPhone が鳴り出す頃だわ。

あれ? こめかみにピキッと痛みが走る。
片頭痛だ!
えっ、なんで?

極度のアレルギー持ちの彼女は、チョコレートで頭痛を起こす。
とくに、高カカオがダメだけど、食べた覚えはない。

気圧の変化?
今日は快晴のはずだよ!

しかし、朝から冷え切った身体は、目覚めるのを嫌がっている。

今の勤務先は、テレワークと出社がランダムにやってくる、なんともルーティーンが崩れやすいシフトだから、彼女は突如として体調不良に襲われ欠勤することになるのだった。

ほんと、女子あるあるよね。

今日から3日連勤で出社しなければならないと、前日から3日分のお弁当を作り置きして、準備万端だったにもかかわらず、ピキピキとなんとも言えない痛みが増す、午前5時。

いや、会社に行きますとも。
だって今日は、休日出勤だから余計なメールも来ないし、電話も鳴らない。
面倒なことがないんだもの。
でもあの、いい人だけど、気だるいメンバーに会うのが億劫だけどね。

仕事は、スピード命と考える彼女からしたら、効率の悪さと要領の悪さをとにかく嫌う。

ここのところ、過度に増えた業務内容にうんざりしている上に、丁寧だけど一向に片付けられない人たちのお世話も大変なのよ。
こっちは、捌かなきゃいけない仕事を振りたいのに、いつまでそれやってるの?
てな感じで、無駄に消耗しちゃうわ。

そんな彼女も大雑把な仕事の仕方をするんだけどね。


こんな風に会社のことを思い出すのは良くない、良くないってわかってる。
一歩、会社を出たら、あぁ一歩、部署を出たなら......

もう、すっかり仕事のことを忘れるような生き方ができたら、どんなに楽だろう。

体調不良って、思考にも良くないわね。

クローゼットをあけて、中の引き出しからバタバタと着替えを取り出し、ハンガーに掛かった洋服の色を選ぶ.....色をね。

大体いつも同じようなコーデの色違いだから、色を選ぶに間違いない。
ほら、会社に着ていく洋服って、みんなこんな感じじゃない?

この頃には、彼女のよろしくない思考は一旦停止して、モーニングルーティーンに入る。

いつも通り彼女は、プロテインにお湯を注ぎ、電動クリーマーで高速に泡立てたら、ビアレッティ・ブリッカで淹れたエスプレッソを注いで、ゆっくりとした時間を過ごす。

この時間がなければ、目が覚めないのよ。

会社に行く時は、朝から食べ物を口にせず、これが朝食代わりに時短とリラックスを同時に手に入れられる至福の手段だった。

ヘアメイクを済ませて出かける準備が終わった頃、機嫌がなおっていたはずなのに、なんとも言えない気だるさが彼女を襲ってくる。

もう、なんで?
片頭痛でも、相変わらず会社へ行くことは、予定から外れてないのに。

もう玄関まで来ているその足がリビングへ引き返すことになるとは…..

いや、3日連続出社に備えて、心も身体も準備していたんじゃない?
全然、行きますって! と思いながらも…..

あぁ、もうこうなったら、自分では決められないわね。

彼女は、いつでも使えるようにテーブルのそばに置いてあるタロットに手を伸ばした。
慣れた様子で軽くシャッフルしてから1枚引くと____

「ソードの6」が出た!
6本の剣を立てた小舟に乗って、静かな水面を漕ぎ出す親子の姿から読みとってみる。

____このカードの意味は?
「困難な状況から脱出する」
「環境を変える」「発想の転換」「新たな出発」


はははっはっ、もう、いいでしょう?
彼女は、そのままPCへ向かい勤怠の報告をしてからベッドへ直行するのだった。

欠勤ですとも。
本日は、お休みすることにしましたよ。
だってカードが言うんだから、仕方ないわね!

本当のところ、気だるそうな会社のメンバーの顔を見る元気がないのよ。
わかるでしょ?

彼女は、いつも運がいい!
そう、だから流れている気がよくないところには
自然と足が向かないように生きている。

ほんのちょっと
人より、身も心も素直なだけなのよ。


そんなこんなで、彼女がふたたび目を覚ましたのは、12時を過ぎていた。

もう、いつもの片頭痛は、彼女にとって慣れっこなのよ。
自宅の部屋では、まぁなんとか日常をやり過ごせそうだわ。

おそらく、睡眠不足が引き起こしたであろう不調は、午後になり気温と共に彼女の体温も上昇する。

よくある、変温動物化した女子って感じのできごとよね。


彼女が背負ってるのは、いかに自分軸で生きていけるかっていうこと。

しかも彼女は、いつもこうやって都合よく生きている。
そして、大体うまくいっているのだから仕方がないでしょ。

もう、何も、言うまい。

この都合の良さは、使命なの__? 
それとも、運命なのかしら___?

なんだか、ゾクゾクしてきたわっ
これは、もう本格的な風邪になったみたいね…..

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