彼女に見えている気配たち
彼女は、憑依体質だった。
と言っても霊が見えるとかは、まったくない。
しかし、あっ! この場所は嫌な感じ____
あそこは、磁場が良くないから行きたくないな____
というように、気の巡りの良し悪しをやたらと感じやすいのです。
そして、人の内面や背景を見抜くことにも長けていた。
勤務先でメールやチャットのように
文字だけでやりとりしていても
その人の名前の雰囲気から照らし合わせて
なんとなく、お顔のイメージまでついてしまうように....
そういえば彼女は、いつしか初詣に行かなくなった。
本当は行きたいのよ。
でもね、ものすごく体調を崩すから行かない方がいいかなって….
他にも、家の中が、バキバキ音が鳴ってとうるさいことがあるの。
玄関先に盛り塩でもしようかしら?
まぁこの話は、これくらいにして____
彼女は、デジャヴも見るわよ。
よくあるのが、友達でもなく
それほど仲良くしていたわけでもない人が夢に現れるの。
夢の中で何か話すわけでもなく
視線を合わせるわけでもなく.....ね。
何年も前に、いきなり登場した同僚の男の子がいた。
そしたら、今まで会ったことがないのに
その日に限って、朝のエレベーターで一緒になり
「俺、今日で最後なんだ」と言い出した。
ピンときた彼女は
あぁ、それを伝えたかったんだね、君は...と密かに思う。
ってか、あなたと飲みに行ったり休憩時間に話したこともないんけどな。
彼女は、不思議に思っていた。
後から知ったことだけど、退職するその彼は、彼女がものすごくタイプだったんだって。
え? え_____っ!
そんなこと、知らんがな!!
いやいや、今まで席が隣になったこともあったけど
一度も話しかけてこなかったよね。
気を遣って彼女から話しかけたことがあっても
話は、何ひとつ盛り上がらず、だったじゃない?
ちょっと年齢が離れてたから
うっとうしいかもしれないと
彼女からも話すのを遠慮した覚えがあるくらいなのに。
しかも、あんた、他の子と社内恋愛してたよね。
ホント、まぁ、どうでもいいけどさっ。
彼女にとってこんなことは、日常茶飯事だった。
あ、デジャヴの話ではなくて、遠くで異性に見つめられることの方ね。
そうなのよね____
なぜか彼女は、いつも人づてに
「誰々が、一緒に飲みに行きたい」って言ってるよ。
とか聞かされるんだけど....
知らんがな!
だったら「誘いに来い! 来たらいい! なぜ来ない!」と思うのだった。
そして、数日前のこと。
社内でとても頼りになる上司が夢に出てきた。
ここのところ彼女は、有給休暇を使いまくっていたので
その上司とはあまり接していないし、近況がわからないのです。
だから、よけいに「あれ?」何かあるのかしら
もしかしたら、辞めるのかもね____
と、少し気掛かりになりつつも、すぐに忘れていた。
次の出社日、彼女の仕事はいつも以上に
いや、祭りのように盛り上がっていた。
もう、当日中に片付かないんじゃないかと思いながら
溜まったメールを1件ずつ削除していく。
そこで、ある1件のメールに目が留まる。
予感的中!
デジャヴでしたね。
上司が、今月末で退職だと知ることになるのでした。
ここ1ヶ月くらい
ほとんど話していなかったから潜在意識が
お伝えに来たのかしらね。
あぁ___
また、一人まともな人が辞めていく。
当然といえば当然。
すぐにでも即戦力になるような人だもの
吸収するだけしたら、転職するのは致し方ないのよね。
実は、前々から彼女自身が
今すぐにでも会社を辞めたいと言っていたの。
そのことは、理由も含めその頼れる上司に相談もしていたわ。
もちろん、みんな思うところは同じだから
話しているうちに、この人もある程度で見切りをつけそうとは思っていた。
彼女は、先を越されたんだけど
早々に見切りをつけた上司に「やったね!おめでとう」という気分だった。
いや、本当に良かったよ。
さすが、大したもんだわ。
以前から彼女は、会社のあり方について考えていたわ。
不特定多数の人が、それぞれの目的を持って
たまたま、集まっただけ
そうよね、職場ってそういうものだから____
他人に不快感を与えない
感情やエゴを出して人と接しない
仕事以前に
あたりまえことが
いかに…
大切かってことを…..
年齢を重ねると人は、見た目と内面が一致してくる。
ねえ、そう思わない?
それは、体型や表情、視線を見れば
だいたいどういう生き方をしているかわかってしまうように___
だから、彼女の背筋はいつも抜群にまっすぐとしている。
猫背なんてもってのほか。
椅子の座り方にも、歩き方にも気を遣っているし
どんなに疲れていても社内では、不機嫌な顔をしない。
彼女の運がいい理由はそこにあるのかもね。
その代わり、小さくて狭い社会の中では
羨ましがられ、マウントをとられ、嫌がらせもされているわ。
でもそれが、どうしたっ!
知らんがな!
彼女が、彼女でいるには
どれだけの努力をしてきていると思っているのかしら。
他人なんて眼中にないほど、自分の軸が太く逞しくなっているだけなのよ。
別に自分に自信があるわけでも
それほど、自分に興味があるわけでもないんだけどね。
いつも、いろんな人に憑依して演じてみるのも___人生楽しいわよ。