Adobe FrescoとProcreateの使い分け
デジタルイラストの世界には、さまざまな描画アプリがあります。
ここでは「Adobe Fresco」と「Procreate」の違いを探ってみたいと思います。
デジタルイラストにおける基本
はじめに、デジタルイラストにはブラシツールというのがあり、大きく2種類に分けられます。
デジタルブラシは、Adobe illustratorやPhotoshopにも使われてるもので、馴染みがあるかもしれません。
デジタルイラストを描くときに、何を選ぶかとても大切なので、簡単に説明しておきますね。
ラスター（ピクセル）ブラシ
AdobeでいうとPhotoshopに搭載されているブラシです。
フォトというだけに写真をイメージしてもらえればわかると思いますが、写真はドットの集合体で画像化されています。
画素数なんで聞いたことがあるかもしれません。
その画素数が多いほど画像が鮮明ということです。
ラスターブラシは、細やかな色の組み合わせがしやすいとか、質感を選べるといたところが特徴です。
しかし、拡大するとドットが大きくなるにつれ、画質の粗さが目立ってしまうデメリットがあります。
ベクターブラシ
ベクターブラシは、Adobe illustratorがとても有名かと思いますが、デザインの世界で多用されている有名なデジタルブラシです。
グラフィックデザインやロゴ、図形などに使われることが多く、拡大しても線が劣化しないようなものに適していて、滑らかではっきりとしたラインを出せるのが特徴です。
「ベタ塗り」が、キレイなのもベクターブラシになります。
ただしベクターブラシは、Adobe illustratorに特化している上に、容量が多くなりがちというデメリットがあります。
それでは、このことを踏まえて「Adobe Fresco」と「Procreate」の違いを見ていきましょう。
何が違う？Adobe FrescoとProcreate
多くのクリエイターに長く愛されている「Adobe Fresco」と「Procreate」は、どちらも「お絵描きアプリ」として括られがちですが、じつは性格も得意分野もまったく違います。
では、アナログ制作の知識を土台にしながら、ふたつのアプリの特徴と目的別の使い分けを整理してみますね。
Adobe Fresco
アナログの手触りをそのままデジタルにしたような「Asobe Fresco」のブラシは、3種類です。
先に説明した、ピクセルブラシにベクターブラシさらに水彩や油絵の特徴を活かせる「ライブブラシ」があります。
ライブブラシは、水のにじみや色の混ざり合いといったアナログ画材特有の質感を驚くほどリアルに再現します。
まるで実際の絵の具がパレットで混ざり合い、紙の上で広がっていくような動きを再現してくれ、絵画的な表現を追求したいユーザーに最適なブラシです。
◆ Frescoが得意なこと
- 絵具の物理表現（にじみ・乾燥・混色）が圧倒的にリアル
- Adobe Photoshopとの連携がスムーズ
- レイヤー形式やマスクなどがPhotoshop準拠で編集の自由度が高い
- 版画やパステルなどアナログ再現ブラシが強い
◆ Frescoが向いている作品
- 水彩・油彩の濡れた質感を活かしたイラスト
- 絵具の偶発的な広がりを活かしたアート寄り表現
- Photoshopでの後仕上げ前提のイラスト
- テクスチャ主体の厚塗り・風景画
アナログ経験者ほど、Frescoの「材料が呼吸しているような質感」に惹かれるはずです。
Procreate
発想を逃さずとにかく自由に描くための「Procreate」は、基本的にラスター形式に特化したドローイングアプリです。
Procreateの長所は、圧倒的な操作性と直感的なUIです。
どんなタッチでも軽く動作し、ジェスチャー操作がスムーズで「すぐに描き出せる」「即座に試せる」というスピード感が魅力です。
iPad専用に設計されているため、非常に動作が軽快でイラストを描く上で、描きやすさに優れています。
◆ Procreateが得意なこと
- 軽くて速い、動作のストレスがない
- UIがシンプルで、制作のリズムを止めない
- ブラシが豊富で、カスタマイズ性が高い
- テンプレ・レイアウト・テクスチャ素材も多く、SNS向け制作が早い
◆ Procreateが向いている作品
- イラスト全般（キャラクター、漫画、カット系）
- SNS投稿用の短時間イラスト
- ラフ・スケッチ・構図案、アイデア出し
- シンプルな厚塗りやデジタル寄りの塗り
とにかく「描くスピード」を大切にしたいクリエイターに向いています。
Adobe FrescoとProcreate のどっちが向いている？
実際にイラストレーターの方々は、どちらも使い分けている場合が多いようので、制作の目的や環境に応じて使い分けるのが賢明です。
では、それぞれの特徴を踏まえてもう少し掘り下げてみましょう。
Adobe Frescoを選ぶべき人
絵画的な表現を追求したいときに、リアルな水彩、油彩の質感をデジタルで表現したい場合は「ライブブラシ」が非常に強力です。
デザインとイラストを両立したいなら「ベクターブラシ」があるため、イラスト制作からロゴ、Webデザイン用の素材作成まで、拡大縮小に強いデータを作りたい場合に適しています。
そして、制作のワークフローにPhotoshopやIllustratorが組み込まれている場合なら、Adobe製品との連携が容易な上に、Creative Cloudでのデータ連携を重視すできます。
また、iPadだけでなく、WindowsやMicrosoft Surfaceなど複数のデバイスで作業したい継続したい場合にも適しています。
Procreateを選ぶべき人
デジタルイラストレーションをメインに、漫画、SNS用イラスト、キャラクターデザインなど、ラスター形式のイラストを軽快な動作で大量に描きたい場合におすすめです。
ブラシの種類が豊富な上に、簡単にオリジナルのブラシを作成したい場合に適しています。
初期費用を抑えたいなら「Procreate」は。買い切り型で追加費用なしで全ての機能を利用できます。
iPadのタッチ操作に慣れているなら、最適化されたシンプルなUI/UXで直感的に作業を進められるのでおすすめです。
Adobe Frescoは「絵具の世界」Procreateは「線と自由の世界」
結局のところ、どちらが優れているかではなく、表現したい世界観によって主役が変わります。
そしてじつは、アナログ技術を理解しているほど、ふたつのアプリの「引き出すべき表現」が直感的に選べるようになります。
アナログ経験者は「光の当たり方」「絵具の重さ」「紙の吸い込み方」などを身体感覚で理解しています。
そのため、AdobeFrescoでは、滲ませたり厚塗りをしたり「界観のある一枚絵」を描くときに使い、Procreateでは、軽やかな線、スピード、アイデアを逃さない制作をしたいときに使うなどができます。
アナログの基礎があれば、絵具的な表現とデジタル的な整理を目的によって「Adobe Fresco」と「Procreate」行き来しやすくなるでしょう。
──── Yukino
